・ カナレット と ヴェネツィア展 ・ ドゥカーレ宮 ヴェネツィア

先月末に出かけて来たヴェネツィアのドゥカーレ宮で6月9日まで開催中の展覧会
カナレットとヴェネツィア展」は、大変素晴らしい内容で、とりわけカナレットの
作品を纏めて見たいと願っていた私には願ってもないものでした。

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主題通りヴェネツィアの18世紀、繁栄を極めたヴェネツィア共和国の最後の世紀における
ヴェネツィア絵画と呼ばれる実り、色、光と影、そして装飾性を極めた、
新古典主義が始まる前の絵画、

主としてカナレット、そしてジャンバッティスタ・ティエポロ、フランチェスコ・
グアルディ、ピエトロ・ロンギなどなどたくさんの作品がありました。

展覧会のYouTubeがこちらに。 https://youtu.be/IfZsy3SgQrA

10年ほど前にトゥレヴィーゾで大カナレット展があった時に見逃しており、
後にとても残念に思っていた私にとって、今回は自分の中での見たい希求とが重なり、
多分私にとってはじっくり見れる一番良いチャンスだったのかも知れません。

会場の作品のヴェネツィアからの出品、または出品先からOKのある作品には、
名札にカメラのアイコンが付いており写真も撮れたので、それでご覧頂き、
撮れなかった作品は買って戻ったカナレットの小冊子に載っていたのをスキャンしたり、
サイトで見つけたりしたものでご覧頂きます。



「カナレット・Canaletto 1697-1768」、本名ジョヴァンニ・アントニオ・カナール・
Giovanni Antonio Canal、父親ベルナルド・Bernardoも舞台装飾を手掛ける画家。
それで息子は小カナール、という意味から「カナレット」と呼ばれたと言いますが、
または彼が背が低かったから、とも。

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所でこちらでよく言われる冗談で、どこかカナレットの絵の前でシニョーレが2人、
このカナレットの絵は・・、と言っていると、後ろで聞いていた女中が
「いえ、あれはグラン・カナーレ・大運河ですよ」と。


多分かなり裕福な家柄出身で、父親を通して絵を始め、仕事を手伝い、
アントニオ・ヴィヴァルディの幾つかのオペラ作品の舞台も受け持った様子で、
21~23歳にかけ、父親と兄のクリストフォロとローマに出かけ、スカルラッティの
仕事をしたり、

またローマではアントーニオにとっては初めてのヴェドゥティスティ・Vedutistiと
呼ばれる画家たち、自然や街の景観を眺め・ヴェドゥーテ、描いた画家達の作品に出合い、
これらから大きなきっかけと多くの示唆を受け、それと共に自身の技術を磨きます。

18世紀に起こったこうしたヴェドゥティズモ・Vedutismoの流れですが、
とりわけヴェネツィアに於いて大きな隆盛を見た、というのは、運河の水の色と光、
影の遊び、そして建物類の魅惑的な眺めがあったからと言われますが、
つまりはそれをとらえた「カナレットの見る目と、描く技術」があったからと思います。



会場の第一室にはこの一点、ジャンバッティスタ・ティエポロの・Gianbattista Tiepolo
の「ヴェネツィアに富を捧げるネプチューン」 135x2750cm ドゥカーレ宮蔵

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ヴェネツィアを現す海の女神に、海神ネプチューンが豊穣の角に溢れる富を捧げる図で、
こうして近くから見るとそれはまた一段と力強く印象に残るもの。

ティエポロの作品はこうした油彩画よりも、各地で見かけるヴェネツィア貴族のお館や、
教会の大天井画、勇壮で壮大、広い画面をいっぱいに使ったロマンあふれる装飾美を
見慣れていますが、これはまた第一室に相応しい彼の実力溢れる作品で見惚れました。


第一室にあったのはこの作品と、ガラスのケースに入った60cm程もあったか、
ブチントーロ・ドージェのお召し船、の金色模型で、ふと思い出し、ちょうど近くに
おられた係りの方に、ブチントーロの復現が進んでいると何年か前に読みましたが、
あれはどうなっていますか、と尋ねると、

莫大な費用の為に、市の方は一切タッチしておらず、私的プロジェクトとして
始まったものの結局スポンサー集めの段階で止まっているようですよ、との事でした。 
残念ですねぇ。



そして今回の展覧会のテーマ画として登場した、カナレットの「大運河の眺め
バルディ邸からリアルト橋方面」 1029x720cm カ・レッツォニコ収蔵

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大運河がリアルト橋方面から西に来て、ここで左にカーヴを切り、アッカデミア美術館
方面に行く角を描いた素晴らしい作品で、



ちょうど角の光と影の位置に差し掛かった舟の、赤いテントが大変に効果的で、
この水の色、ちょっと緑がかった、でも決して濁ったり汚れているわけではない水の色が、
ヴェネツィアの運河の色なのですね。

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向かい側の北岸の建物類。 手前のゴンドラが溜まっている場所は、現在ヴァポレットの
停留所になっている場所で、その奥の小運河が入り込む角は現在渡しの大ゴンドラが
対岸とを繋ぐ場所で、ここを入って行くとカルロ・ゴルドーニの生家博物館が。

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建物の古さも良く描かれており、こうして見ると奥側の建物に遠近の窓の線を決める筋が
残っているのも、絵を描くものにとってはにんまりと!



突き当り方面のリアルト橋一帯を何枚か撮りましたが、皆ピンボケで残念です。
確かに見る目には、きちんと大雑把に描かれていて、凄いなぁ!と。

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これは空の影色の雲の色がちょっと目を引き、写したものです。



所で会場はドゥカーレ宮の3階の、ドージェのアパート、ヴェネツィア総督の居住区で、
普段なら素晴らしい装飾も見えるのでしょうが、部屋全体がほぼ真っ暗にされ、
作品にのみ光が当たる様になっていて、どちらもとはいかずで、はは、
何とか見える暖炉部分のみをいくつか撮りましたので、どうぞ。

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またチャンスを見て、ゆっくりドージェのアパートを見に行くのも良いなぁ、
と思った事でした。



これはティエポロの「ジュピターとダナエ」 41x53cm ストックホルムから

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余りにも豊かな、見事なお尻の美で、はい。 



カナレットの「サン・マルコ流域、東に向かい」 124,5x204,5cm ボストンから

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以前やはりカナレットの絵で、この絵の右手に描かれているサン・ジョルジョ島を主題に、
その手前の海、運河を描いた、大変に明るい絵に見惚れた事がありますが、
これは少し暗く見えるものの、逆に大気、空の輝きが感じられる素晴らしい作品で、

サン・マルコ湾のドック、船の修理や造船の為の、というタイトルも見かけますが、
かってはこの辺りにドックがあったのも知りました。



雄大で、素晴らしい描写をどうぞ! 全く、良くぞ描いたり!!と言いたくなる程で。

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最後の写真で良く見えますが、カナレットの波の描き方は小さな波紋が見えるものの、
大波は無い、すら~っと広がる静かな湾で、
現在のモーター・ボートが走り回り、ヴァポレットがかなりの波を引き行き来するのとは
かなり感じが違いますね。



こちらは小冊子とサイトからご覧頂く、カナレットの「サン・ヴィダルの石工工房
124x163cm ロンドン・ナショナル・ギャラリーから

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この作品は景観を描いた見事さだけでなく、描き込まれた仕事に従事する職人の姿、
近くで遊ぶ子供たちの姿、家庭内の仕事をする主婦の姿など、日常生活も感じられる
その細やかさに見惚れました。

サン・ヴィダルというと、アッカデミア橋を北に渡った所で、未だ橋の姿はなく、
向こうに見えるサンタ・マリーア・カリタ教会と鐘楼が見え、この鐘楼は1741年に
倒壊し、現在はここがアッカデミア美術館になっているのですね。



この作品は写真が撮れずで、手前の子供たち、主婦の姿などご覧に入れられず
残念ですが、

これは運河の向かい側の教会前の建物で、窓から乗り出す女性の姿や、運河沿いの
様子などが見え、カナレットの見つめる目を感じます。

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カナレット「大運河、リアルト橋、南から」 45,5x62.5cm 個人蔵

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この作品はちょっと変わっていて、パッと見に、橋と建物群の色に張りがないなぁ、と
思ったのでしたが、銅に油彩、とあり、どういう意図からか分かりませんが、
色を乗せ定着させるのにどうしたのだろう、表面を荒く磨いたのかなとも考えたり・・。

カナレットのは余り絵の具の盛り上げは見えないのですが、これは珍しく
空の白さの中に盛り上げを見ました。



そしてこの手前の帆布の白さ、薄いブルーの縞入りですが、これが何とも引き立ち、
見事で、光と影の使い方が本当に素晴らしいなぁと思った作品です。

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奥に見える大きな赤い布と金色のブチントーロが目立つ中くらいの大きさの作品で、題名分からず、
同等の構図、同じ大きさで描かれた甥のベルナルド・ベロット・Bernardo Bellotto、
カナレットの妹の子、の作品と並んでおりましたが、

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ブチントーロ・ドージェの御座船を描いた大作の華やかな作品は、他にいくつも。



こちらはサイトからで、「フランス大使のドゥカーレ宮到着」 181x259cm 
ロシア、エルミタージュより

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こちらも同じ主題の絵が何枚かある様子ですが、会場にあったのはこの作品で、
手前のパーリア橋からゴンドラが出てくる場面が右下端に。

雲の大きな影が海側の船にも、ドゥカーレ宮にも落ちているのが特徴で、
そういったその日の天候状態も良く分かるのが、彼の絵の特徴ですね。



これは小冊子からで、「ウォルトン・ブリッジ」 48,8x76.7cm イギリスから

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少し暗い空と周囲の風景の中に、はっきりくっきりと浮かぶ白い木組みの橋で、
カナレットがイギリスに滞在した時代の作品だそうで、会場で目立ちました。

甥のベロットの作品も北ヨーロッパでの仕事が多かった様子で、ヴェネツィア風景は
似た感じでも、やはり土地の雰囲気、空気が違う少し暗い感じの絵が多かったのを
覚えていますが・・。



こちらも小冊子から、「サン・マルコ聖堂内」 サイズ見つからずですが、大きくなく、
カナダのモントリオールからと。

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ほぼ茶色が全体の色なのですが、金色のモザイクが光るのが分かる、という言い方は
おかしいですが、筆力を感じる作品でした。



ピエトロ・ロンギ・Pietro Longhiの作品も3点あり、柔らかい印象で、当時の風俗を
描いており、

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下がよくサイトでも見かける「犀の見世物」。 カーニヴァル期の様子が分かりますね。



ティエポロの作品で「ヒュアキントスの死」 287x232cm スペインから

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ギリシャ神話に登場の美少年で、アポロンの投げた円盤が頭に当たり死に、流れる血から
咲いた花がヒヤシンス、というお話だそうで、



右下にヒヤシンスの花の手前に、テニスのラケットと球が見えて撮ったのでしたぁ、へへ。

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こちらはアレッサンドロ・ロンギが描いた「カルロ・ゴルドーニの肖像」サイズ分からず。

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カルロ・ゴルドーニの家博物館の中庭に写真があり、ブログで取り上げたので、
会場で見かけた時は既知の方に出会った様で、ははは。

画家のアレッサンドロ・ロンギは、名前から想像した様にピエトロ・ロンギの息子と。

ヴィヴァルディ・A.Vivaldiと、ピエトロ・ロンギ・P.Longhi
http://italiashinkaishi.seesaa.net/article/461262801.html

ヴェネツィア ・ ゴルドーニの家博物館、サン・トマ広場周辺
http://italiashinkaishi.seesaa.net/article/463330953.html



こちらはちょっと異質ですが、大理石像で、「ヴェールを被った女性像
アントニオ・コッラディーニ・Antonio Corradini(1668-1752)の作だそう。

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正面側よりもこちらの方が美しいので。

ナポリで、やはりヴェールを被った像を見ましたが、あれは凄かった!!
こういう技術の凄い作品は、時に技術の方が見えすぎると困る事になりますが。



展覧会の最後を締めるのがアントニオ・カノーヴァで、この石膏の弔碑、大作と、
小さなのが出品されておりました。

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ドージェのアパートの天井装飾2点と、

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出口の扉の重々しさ。 

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カナレットの作品を主にご覧頂きましたが、他にも色々あったのが写真が撮れず、となると
出品作品のカタログも無かったのでタイトルを覚えておらず、たくさんの作品も頭から
消えてゆきます。 まぁ、記憶の強かったのはサイトや本で探しましたが。


会場に展示は無かったのですが、やはりカナレット描く、「サン・マルコ広場
68.6x112,4cm アメリカ、マサチューセッツのケンブリッジ、フォッグ・アート、
を最後にどうぞ。

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こちらもいくつもバリエーションがある様ですが、中には広場の敷石がまだ、
という様子のもサイトで見ました。

当時の姿をこうして見ると建物自体にはあまり変化がなくとも、点在する人間の姿、
服装が違い、船もしかりで、また全体を包む空気がやはり違いますね。

会場で彼の作品が他の画家の風景画と並んでいるのを見た時に最初に感じたのは、
すっきり、きりっとした空気、の違いで、これが今回の大きな収穫でもありました。


カナレットはまた「カメラ・コン・ヴェドゥータ・Camera con Veduta」と呼ばれる、
いわゆる現在のカメラの原型とでもいう器具を使いスケッチを取った事でも有名ですが、
そのスケッチなどもサイトで探していてたくさん見つかり、
またカナレットのみでなく、同様にカメラ・コン・ヴェドゥータを使ったとみられる
画家の名もたくさん見つけました。

ですがそのスケッチ類も、えっ、この程度なの?と思う一番の基本線のスケッチで、
それらから今残る彼の作品の出来具合を想像するのも難しいほどで、

光、空気のきらめき、人物像の動き等など、やはり彼自身の技量の凄さと思いますので、
そんな事もまた調べ、ご覧頂きたいと思っています。


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記録庫ブログには、 再度 ヴェネツィアを 7記事
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色鉛筆+水彩画ブログには、
トスカーナの小さな店 描き始めと、 レナートのお誕生日昼食会 を  
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この記事へのコメント

  • ribbon_118

    2019.5.22にドゥカーレ宮殿を見たくてチケットを買ったつもりが、紹介してくださったイベントのチケットだったのです。あらゆる検索の結果こちらに辿り着きやっとどんなチケットを買ったかわかりました。折角ですのでチケットを有効に使いつつ、ドウッカーレの黄金の間も観れるのか知りたくてコメント書かせて頂きました。通常見学の為には新しくチケットを買う必要があるのかご連絡頂ければ幸いです。
    2019年05月07日 12:45
  • shinkai

    ★ribbon_118さま、こんにちは! ブログご訪問、コメント有難うございます。

    ああ、そうですか、買われた切符が「カナレット展」のみの切符でしたか? お幾らで買われたのでしょうか?
    私はこの展覧会の切符をドゥカーレ宮入り口で当日券の11エウロで買いましたが、ドゥカーレ宮全体の見学は20エウロと出ますので、もし買われた切符がどの値段だったかで、どちらを買われたかが間違いなく分かりますね。

    もし展覧会の切符だけでしたら、折角行かれるのに勿体ないですから、やはり会場の入り口を入った所にある切符売り場で追加分をお払いになると、大丈夫です、全体がご覧になれます。

    ともしドゥカーレ宮に行かれるのであれば、朝早く、8時半から開きますので、なるべく早く行かれる事をお勧めします、何せ切符売り場に行列が出来ますので、と、
    私の場合もそうでしたが、展覧会場のみの切符を持っている人の入場はすんなりですので、それで入られて、切符売り場の窓口で追加料金を、という事が可能な筈です。

    黄金の間、というのは、多分黄金の階段の事と思いますが、これは展覧会のみでも下半分は見る事が出来ますが、
    ドゥカーレ宮の有名な大評議会の間などは、全体見学の切符でないと入れない様になっています。

    ヴェネツィア滞在が素晴らしい物であります様に、良いご旅行を!

    2019年05月07日 15:14
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