・ 「聖母戴冠」 または 「聖母被昇天」図のあれこれ

先回ご案内したヴェネツィアのサンタルヴィーゼ教会・Sant'Alvise
が捧げられているのは、聖ルドヴィーコ・ダ・トローザ・San Ludovico
da Tolosaという聖人で、

かなり以前からこの聖人について関心を持ったのは、ウンブリアのナルニで
見たギルランダイオ・Girlandaio描いた「ナルニの祭壇画」と呼ばれる
「聖母被昇天」に描かれている聖人の1人、若く清潔な趣の聖人に
興味を持ったのが始め、と書きました。

で、「ナルニの祭壇画」は大変に美しいのでナルニで買って来た画集のご案内を、
と思ったのですが、載っているあれこれの画家の「聖母戴冠図」を眺めていて、
どんな画家がどんな「聖母戴冠図」を描いているのかと、はは、
また横道の好奇心に惹かれ調べ、集めて見ましたので、

「ナルニの祭壇画、聖母戴冠図」の前に、今回はあれこれの戴冠図を
ご覧下さいね。 実際本気で調べたら、物凄い数になるのだろうと思いますが、
一応ルネッサンス期の有名な画家、という事で見つけた物を。

まずは、フラ・アンジェリコ・Fra Angelico(1395頃-1455)の作品3つ
・フィレンツェのウッフィツィ美術館収蔵の 「聖母戴冠」
 1434年作 112x114cm 黄金背景 板にテンペラ

1-Fra-Angelico-The-Coronation-of-the-Virgin.jpg

黄金背景でもあり、大変に煌びやかで、荘厳なイメージを受けますね。
ウフィッツィには2,3度行っているのに、余りちゃんと見ていないのを反省!



・パリのルーブル博物館収蔵 「聖母戴冠」
 1434年-35年作 213x211cm 板にテンペラ

2-beato-angelico-incoronazione-della-vergine-museo-del-louvre.jpg

「聖母戴冠図」は空中に浮かんだ構図で描かれているのが多いのですが、
これは周囲をたくさんの聖人、聖女に囲まれ、高い玉座の上での戴冠図。

テンペラ特有の玉虫色、というのか、影色が暗くならず美しく、
きっと絵を眺める人は天国に誘われた心地になった、なる事でしょう。



・フィレンツェのサン・マルコ美術館のフレスコ画の「聖母戴冠」
 189x159cm

3-Angelico,_incoronazione_della_vergine_1440-1441.jpg

上の2点に比べ、大変に涼やかで美しい作品と思い、サイトで見つけた時は
ほっと溜息が洩れるような感じがしました。

上記の2点は注文を受け(お金を貰い)、それがたとえ教会の祭壇画であろうと、
注文主の希望を聞いて描いた絵ですが、
サン・マルコ教会の各個室、廊下、広間に描かれた絵は、彼の生活拠点の、
祈りを捧げる修道士の生活の中から生まれる絵で、いわば彼の精神生活
が窺える、その違いでしょうね。

最初に訪れた時、階段踊り場の上に見えた「受胎告知図」の、
あの美しさに驚いた事は今も記憶にしっかり残ります。



さて、フィリッポ・リッピ・Filippo Lippi(1406-1469)の2点を。
・フィレンツェ・ウッフィツィ美術館収蔵 「聖母戴冠」 または
 「マリンギ・Maringhiの戴冠」図とも呼ばれるそう。 
 1441-1447頃の作  200x287cm  

4-Filippo_Lippi_Incoronazione_Vergine.jpg

リッピの描く人物像は、とりわけ女性の顔が丸みを帯び、これは
フラ・アンジェリコの描く人物像にも感じる、清純さ、ですね。

穏やかで、優しい雰囲気が漂う一方、両脇のアーチの内部の白薔薇の
背景はブルー濃淡の斜め縞で、その斬新さにも驚かされます。



フィリッポ・リッピの自画像、が上の画面に描かれていて、

5-Fra_Filippo_Lippi_007.1.jpg

見つかりましたか? 左下手前に、頬杖を突き、こちらを眺めています、はは。



スポレートのドゥオーモの祭壇画「聖母の生涯」の中の天井部分に。
 1466-1469年作 

6-Medieval_fresco_on_Duomo_of_Spoleto.jpg

リッピの最後の作品で、彼が60から63歳の作品になり、下の聖母の生涯の
逸話部分は静かな落ち着いた色使いですが、



丸天井部分の「戴冠図」は、大変に鮮やかな色使いで、と言っても
各色が派手ではなく、白の衣装の色、そして虹と青い雲の色が画面を
より素晴らしく引き立て、リッピの画家人生最後の力を見る思いです。

7-5137_esterna.jpg

8-lippi_15400579.jpg

内陣奥にあるので、普通は余り良く見えませんが、灯のつくミサの時など
その素晴らしさに息をのみます。



フィリッポ・リッピの弟子としても有名なボッティチェッリ(1445-1510)の作品2点
フィレンツエ、ウッフィツィ美術館所蔵 「聖母戴冠」
 サン・マルコ教会の祭壇画とも。
 1488-1490年作  378x258cm  板にテンペラ

9-Botticelli,_incoronazione_della_vergine_480.jpg

彼の作品としては、同じウフィッツィに素晴らしく、そして有名作品が何枚か
あるので、これは見ていないのを白状いたしますが、へへ

上部の花を散らした丸い三角形が、どこかリッピの虹の円にも似ている様で、
微笑ましい思いも。

聖母と冠を与える神の間に天使が見えますね?



で、こちらを。 この天使なのですが、上から降り注ぐ金の光の向こうに、
というこの表現なのを今回知りました、凄いなぁ、流石ぁ!

10-1ohJZkW09L.jpg



消えていたボッティチェッリの「幻の聖母戴冠」図が、2世紀後に戻りました!
 ナポレオンの修道院廃止制作により持ち去られ、その儘になっていたのが、
 現在フィレンツェ大学の博物館システムの一部となり、セスト・フィオレンティーノの
 ヴィッラ・ラ・クイエーテ・Villa la Quieteに保管されているそうで、
 元のモンテヴァルキ・Montevarchiの町で展覧会が開かれたそうで。
 
こちらです。
下部に聖人たち、上部には天使達という構図。 15世紀後半の作品と。

11-Montalve-Sandro-Botticelli-Incoronazione-della-Vergine_imagefull.jpg 

12-incoronazione_vergine_santi_botticelli_2019_04_25.jpg

聖人たちの脚元に広がる草原の、野草の花が如何にもボッティチェッリ
ですが、どちらの作品にも彼独特の優美さが少し影をひそめている様で・・。
何年位が彼の作品にとっての最良な時期だったんだろう、という疑問も。


 
ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ・Gentile da Fabrianoの
 「聖母戴冠」図 1400-1410年  157,2x79,6cm 板にテンペラ 金箔

13-gentile da fabriano.jpg

この作品はヴァッレ・ロミータ・Valle Romitaの祭壇画、と呼ばれる祭壇画の
中心にあり、全体の大きさは280x250cm 現在はミラノのブレラ絵画館収蔵。

同じ15世紀でも先に後半の作品が出て来ましたので、時代の作品の流れが
よく分かりますね。

ですがこの絵によって、shinkaiの疑問、戴冠させるのは神か、キリストか、の
疑問が少し解けました。 というのも最初のフラ・アンジェリコの2作の、
冠を与える方はまだ若いのですが、最後のフレスコ画では白い髭ですし、

それ以降のフィリッポ・リッピにしろ、ボッティチェッリにしろ、髪も髭も真っ白で、
戴冠させるのは神なのか、キリストなのかと調べたのですが、
戴冠の玉座に、神の前に導くのはキリストである、という説明が見つかり、
ではやはり神が冠を授けるのであろう、とは思ったもののもイマイチね。

ですが、このファブリアーノの絵には、神の前にキリストと聖母がいて、
キリストが冠を授けているでしょう? 
なので、聖書の中には聖母の意味付けはない、と読んだ事でもあり
その辺りは画家の裁量によるのかなぁ、という気も。

皆さんはどう思われますか?



・同じジェンティーレ・ダ・ファブリアーノの「聖母戴冠」
 1420年作  87,5x64cm  ロサンジェルスのゲッティ・センター像
 板にテンペラ、金箔

14-Gentile_da_Fabriano_-_Coronation_of_the_Virgin.jpg

大変に可憐で美しく、素晴らしいですねぇ。 装飾柄も美しく、こういう絵は
如何にもコレクター好みかもですね、と余計な事を、はは。

天使に囲まれ、そうか、この場合は真ん中上の白い鳩が神を現しているのですね。



ロ・スパニョーラ・lo spagnora(1470-1528) 「聖母戴冠」
 430x305cm・全体  板にテンペラ 

15-Giovanni_di_Pietro_(detto__Lo_Spagna_)̠_Incoronazione_della_Vergine_.jpg

ウンブリアのあちこちで彼の名を見かけますが、本名ジョヴァンニ・ディ・ピエトロ・
Giovanni di Pietroと言い、ニックネームの由来は元々スペイン出身からと。
 
彼の絵の師はピエトロ・ヴァンヌッチ・Pietro Vannucciで、彼の有名な
弟子で名が挙がるのがピントゥリッキオ・Pinturicchio、そしてラファエッロ!
なので、少し隠れ気味ですが、丁寧な絵と思います。

この絵は、モンテファルコのサン・フランチェスコ博物館に収蔵だそうですが、
他にも同じ主題、構図を見つけましたので、注文を裁いていたのかも!



ラファエッロ・Raffaelo Sanzio(1483-1520)の「聖母戴冠」
 オッディの祭壇画・Pala degli Oddiと呼ばれ、ヴァティカンの絵画館に。
 1502-1503作  163x267cm  板に油彩
  
17-raffaello oddi.jpg

説明によると、板に油彩で描かれたのがキャンヴァスに移された、というのですが、
分かり易く言うと、描き直された、という意味でしょうね?

下半分には12使徒が白い花の咲く空の棺を囲み、上部にキリストが聖母に
戴冠を、という構図で、

「オッディの祭壇画」と呼ばれるのは、元はペルージャの貴族デッリ・オッディ家が
ペルージャのサン・フランチェスコ教会の家の礼拝堂の為に注文したものだそうで、
ナポレオン軍に持ち去られていたのが、ヴァティカンに戻されたのだそうで、はぁ。



という様にあれこれ「聖母戴冠図」をご案内してきましたが、次回に備え、はは、
ギルランダイオ・Ghirlandaioの2点を。

ドメニコ・ギルランダイオ(1488-1494)「聖母戴冠」 
 チッタ・ディ・カステッロの市美術館収蔵  板にテンペラ  寸法分からず

20-Domenico_ghirlandaio,_incoronazione_della_vergine_di_città_di_castello.jpg

ギルランダイオと助手の作、とあります。 色も明るく、上部の水色の輪の中に
天使とキリスト、聖母、 下部は白い背景に聖人たちと、メリハリの利いた構図。
そうか、ギルランダイオは製作が早く、好まれた、というのも、工房の助手の手が
大いに働いていたのかもですね。



・そしてこちらが、次回に細部も含めてご覧頂こうと思っている
 「ナルニの聖母戴冠図」と呼ばれる作品で、1486年頃の作 330x230cm
 板にテンペラ 金箔  ナルニのエローリ博物館蔵

21-Domenico_ghirlandaio,_incoronazione_della_vergine_di_narni_01.jpg

金箔にノミで線を刻んだりで、その輝きとの対比で絵が暗く写っていますが、
大変に美しく威厳のある作品で、ギルランダイオの力量を感じたものでした。

という事で、次回をお楽しみに!


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この記事へのコメント

  • 高野 和久

    ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノの「聖母戴冠」 いいですね!
    これなら今の日本で即売れると思いますよ(下世話でm(_ _)m)

    日本も動き始めました。コロナで死ぬか?経済で死ぬか? 潮目が変わりました。コロナと共存していくしかない!という大きなうねりが押し寄せています。

    ただ、2020夏「長野びんずる祭り」中止! 2021春(七年に一度の)善光寺ご開帳は2022に延期!になりました。(2020夏「東京オリンピック」ももちろん……)

    この新型コロナウィルスは非常に手強い相手でござります。ゆめゆめご油断召さるな!!
    2020年06月14日 23:22
  • shinkai

    ★高野さん、こんにちは! コメント有難うございます。

    はい、お陰様でお互い無事に済みましたねぇ! 生き残りましたね、はは。

    こちらも今日15日からほぼ完全に封鎖解除となりました。 後まだディスコが残っているのかな、これも今月中に解除で、ヨーロッパ間の国境閉鎖も今日から通行OKとなっています。

    そうですね、日本は死者の方が少なく済みましたし、完全封鎖も無かったですから、経済的にもそんなに大打撃は無かったのでしょう? 
    こちらはその点が大変難しく、旅行者が圧倒的に減っているので、これから夏にかけてがどうなりますか、それが問題です。

    中国でまた感染者が増えている様子で、やはり状態をしっかり見極めて、元気でがんばって参りましょうね!! 


    ファブリアーノの「聖母戴冠」、優しくて、細部までの手の込んだ仕事ですよね。 
    ただ日本人は、いわゆるルネッサンス以降の油彩のレアリズム絵画が好きな人が多いので、どうでしょうかね?

    2020年06月15日 23:44