・ ナルニの 「聖母の戴冠」図  ギルランダイオ作

随分前からの自分への宿題となっていた、ウンブリアはナルニ・Narni
のエローリ・Eroli博物館所蔵、ギルランダイオの1486年作
「聖母戴冠図」のご案内を。 上手く纏まります様に!

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1486年頃 板にテンペラ画 金箔を貼った黄金背景 330x230cmの大作

2段に分かれた構成で、上部中央にキリストと聖母マリーアが周囲を
合唱や楽器を奏する天使たちに囲まれ、冠を受ける聖母の姿と、
一番上に天蓋を捧げる天使が左右に。

下部には昇天、戴冠するマリーアを見守る22人の聖人たち、

下の台座部は3つに分かれ、左から聖痕を受けるサン・フランチェスコ、
中央に埋葬されたキリストの蘇り、聖母と福音記者ヨハネが描かれ、
右には「砂漠のヒエロニムス」という構図。

ナルニに行った時に見て、博物館内に単に展示されているだけでなく、
ヴィデオによる細部も鑑賞でき、確か説明もして頂いたと記憶していますが、

細部がそれぞれ見える、という素晴らしさ、凄さは、単に作品を見つめる以上に
印象が深く残り、ギルランダイオの美しく見事な作品にもすっかり魅せられ、
いつか皆さんにも、という自分の宿題になっていたのでした。


この作品はナルニ出身の枢機卿ベルナルド・エローリ(1409-1479)により
ギルランダイオに、ナルニ近郊のサン・ジローラモ教会・修道院の為に依頼され、
作品が出来た、またはナルニに届いた1486年には、既に枢機卿は
亡くなっておりましたが、



枢機卿の作品の注文意向は、どうやら当時としては既に30~40年前の作品である
フラ・アンジェリコのこの「聖母戴冠図」の様な、という事だった様で、
1434年作 112x114cm 黄金背景 板にテンペラ

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つまり黄金背景で、光線、後光が中央から周囲に広がる形で、上部は天使たちが、
下部には諸聖人たちが見守る、という構図ですね。

この図は1825年以来フィレンツェのウッフィツィ美術館収蔵になっておりますが、
元々はサンテディージョ教会・Sant'Edigioにあったものの様子で、

フラ・アンジェリコは当時従来の祭壇画の形から外れ、(たくさんのパネルで
構成された形の事と思いますが)、
四角や長方形の構図で、遠近法を使った広さも試みていた様子。

確かにこうして眺めると、手前の聖人たちの位置から、奥の天使、そして
中央のキリストと聖母マリーアの位置は離れて見えますね。

という注文主の依頼を受けたギルランダイオの祭壇画「聖母戴冠」ですが、
黄金背景、諸聖人たち、周囲を囲む天使達、という点はしっかり応えておりますね。
一体幾ら位の代金だったのか、ちょっと興味がありますが・・!



さて、ナルニで絵を見た後、すっかり感嘆したshinkaiめは絵のガイドブックを買って
戻りましたので、今回はヴィデオはないものの、たくさん載っていた細部写真を
スキャンしましたので、それでご覧頂きますね。 とサイトから拝借の写真もありです。

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マリーアの鼻の頭にぽちっと黒く見えるのは、虫食いの後で~す。



中央はこんな様子で、キリストの腕の下に見える黄金の球形は太陽を現し、
その光線が周囲に広がります。

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かってナルニ近郊のサン・ジローラモ教会の祭壇に会った時は、薔薇窓から入る
光線のみで、何に何度かその光線がこの球体に当たる時は素晴らしい効果を
示し、それを見る為に巡礼が後を絶たなかったと。 美しさのご想像を!



「聖母戴冠」というのは、キリストが昇天して後に、キリストから、または父なる神から、
または3人が揃っての聖母マリーアの戴冠、で現わされるキリスト教美術の主題で、
篤い「聖母マリーア信仰」があるのも、この様に若く美しいマリーアの姿が
大いに貢献していると思われません?!
 
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聖母の腕は胸の前で敬虔に組まれます。 そして衣装の素晴らしさ!

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一応ギルランダイオ作、となっていますが、勿論工房の助手、弟子達の手が
大いに働いている様で、この細部の仕事を見ると大いに頷けます。
が、どの部分の出来が良くない、という様な感じがまるでないのが、
ギルランダイオの工房の共同者、助手達の腕の良さ、の様で。


キリストの顔。 こうして細部を見ると、本当に良い仕事をしているなぁ、と感嘆のみ!

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合唱、楽器を奏する天使達、左側。

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そして右側、 と細部。

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中央2人の頭上には、両側から天使の支える天蓋があり、それに描かれた文字は、
"VENI ELECTA MEA, ET PONA[M IN TE THRONUM MEUM]"

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これは古い合唱隊の応答歌の、聖母に捧げられた一節との事で、
ラテン語で翻訳を掛けましたがぁぁ、出た訳では納得できず、よく分かりませ~ん。 
「聖母マリーア」を褒めたたえ、天国に迎える言葉であろう、という事でお許しを。



天蓋右の天使のアップを。 透明の天蓋なのですよぉ!
白い薄物の襞なども、簡単にチャチャっと描いていますねぇ。

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下部の聖人たち、全体の様子。

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下部の聖人22人の中心のこちら向きが、アッシジのサン・フランチェスコで、

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右手と、右胸の聖痕跡、そして合わせた左掌にも釘の跡が。

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半分づつ、どなたがどの聖人かの名前の説明図があるので、
左側から、簡単に名前と年代を。

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1.サン・ピエトロ・S.Pietro(前1世紀 - 64-67) 初代の教皇に
2.福音記者サン・ジョヴァンニ・San Giovanni Evangelista(10-98)
3.サンタンドレア・Sant'Andrea(前6-60)左から3番目の赤いマント
4.サン・トマーゾ・ダクイナス・San Tommaso d'Aquino(1225-1274)
5.殉教者フランチェスコ・martire francescano
6.サン・ルドヴィーコ・ダ・トローザ・San Ludivico dA Tolosa(1274-1297)
7.ハンガリアの聖エリザベス・Santa Elisabetta d'Ungheria(1207-1231)
8.サン・べラルド・San Berardo この顔が多分注文者枢機卿ベルナルド・エローリと。
9.サン・ブオナベントゥーラ・San Bonaventura(1217-1221-1274)
10.サン・ベルナルディーノ・ダ・シエナ・San bernardino da Siena(1380-1444)



右側

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1.サント・ステーファノ・Santo Stefano(・・ -36)
2.サン・ロレンツォ・San Lorenzo(225-258)
3.サン・パオロ・San Paolo(5-10 - 64-67)
4.マリーア・マッダレーナ・Maria Maddalena・キリストの妻という説もあり
5.サンタントーニオ・ダ・パドヴァ・Sant'Antonio da Padova(1195-1231)
6.サン・ジョヴァンニ・バッティスタ・San Giovannni Battista(前1世紀末-29-32)
7.サンタ・モーニカ・Santa Monica(331-387)
8.サン・ジローラモ・San Girolamo・ヒエロニムス(347-420)
9.サンタゴスティーノ・Sant’Agostino(354-430)
10.サン・フランチェスコ・ディ・アッシジ・San Francesco d'Assisi(1181-82-1226)



細部を。左から 左の10.サン・ベルナルディーノ・ダ・シエナ
    右10.サン・フランチェスコ・ディ・アッシジ、 
    右9.サンタゴスティーノ・Sant’Agostino

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左1.サン・ピエトロ・S.Pietroと、 3.サンタンドレア・Sant'Andrea

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上、左の6.サン・ルドヴィーコ・ダ・トローザ  9.サン・ブオナベントゥーラ

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左の6.サン・ルドヴィーコ・ダ・トローザ、この若く清潔な横顔に惹かれたshinkai!
だってほら、どの聖人も皆お年に描かれているのでね、気が付いたのでしたぁ。

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肩の小マントには、玉座のキリストの刺繍が描かれ、
ブルーのマントには、フランス王家アンジュー家の百合の花。

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彼の生涯についてはこちらに。 



左から、天使の顔、左の10.サン・ベルナルディーノ・ダ・シエナ
そして、7.ハンガリアの聖エリザベス 奥の横顔はフランチェスコ派の殉教者と。

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左枠 9.サンタゴスティーノ、 7.サンタ・モーニカ
中枠 6.サン・ジョヴァンニ・バッティスタ、 4.マリーア・マッダレーナ
   5.サンタントーニオ・ダ・パドヴァ

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左から 4.マリーア・マッダレーナ、3.サン・パオロ、1人置き2.サン・ロレンツォ
    間に重なる2人はフランチェスコ派の殉教者。
    手前5.サンタントーニオ・ダ・パドヴァ

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という様に簡単にご覧頂きましたが、何せ一応どんな聖人かを読みましたが、
ご説明するとなると・・、ですので、ご容赦頂き、
性格を現す顔、風貌、凝視する目の描きようをご覧下さいませぇ。

皆が上のキリストと聖母の様子を見つめているのに、1人だけこちらを見ているのが、
8.サン・ジローラモ・San Girolamo・ヒエロニムスで、

聖人の表現には大体お決まりの約束事、衣装とか、何を持つとかあるのが、
この絵の中では殆どそれが無く、ヒエロニムスも猫代わりのライオンがおらずで!


という所で、ナルニの祭壇画のご案内を終え、

こちら真ん中奥からからこちらを見ている人物が、ギルランダイオ・Ghirlandaio
の自画像で、ギルランダイオは家業からのニックネームで、
ドメニコ・ビゴルディ・Domenico Bigordi(1448-1494).

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長男ながら家業の彫金を継がずに画家の道に入り、ルネッサンス期メディチ家の
ロレンツォ・イル・マニーフィコの時代にはフィレンツェの画家の主役の1人となり、
その引き立ても大いにあった様子。



フィレンツェ駅前のサンタ・マリーア・ノヴェッラ教会のトルナヴオーニ礼拝堂・
Caooella Tornabuoniのフレスコ画は大変素晴らしく有名ですが、

25--ghirlandaio-cappella-tornabuoni-nativita-della-vergine.jpg

フレスコ画は、色が沈み落ち着いた雰囲気もある代わり、いわゆる早描きの絵で、
重ねて描き込む事が出来ず、
レオナルド・ダ・ヴィンチは多分それを嫌って
油彩を使ったりし、ミラノのスフォルチェスコ城の樹々の間とか、フィレンツェの
ヴェッキオ宮の500人広間の「アンギアーリの戦い図」、はたまた
「最後の晩餐図」もですが、
フレスコ画技法との併用が上手く行かず、しっかり残っていない訳で、



ギルランダイオは逆に、既に油彩画がかなり広がっていた時代に、
板にテンペラ、という手法で描いているのですね。

テンペラだと色が美しく出ますし、描き込みが出来るのが彼にとって
魅力だったのだろうと。

これも同じトルナブオーニ家のジョヴァンナ・Giovannnaを描いたもので、
この顔や髪、衣装の艶と輝きは素晴らしいと思われません?!

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27-Ghirlandaio-Giovanna_Tornabuoni_cropped - Copia.jpg

これは以前、車の検査で待っていた時に雑誌で見つけ、その美しさに驚き、
持って帰りたくて、ははは、気持ちがウロウロした事をよく覚えています。
ギルランダイオはまだ若い46歳で亡くなっているのを今回知りましたが、
も少し長生きしていたら、どんな作品を? と少し残念です。



絵はまず全体を見て、良いなぁ!と思ったら傍に近寄り、細部を見ますよね?
ですが、実際にはなかなか細部を見れるチャンスがなく、そんな事もあって、
自分が気に入った絵の細部もご覧頂きたいと思った事からのご案内でした。

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