・ 樹齢370年の大きな樫の木  オルチャの谷ピエンツァ


日本には屋久杉という、樹齢3000年から7000年に至るという
素晴らしい大樹があり、
日本人の心をとらえる桜でも、かの薄墨桜は樹齢1500年とか。

それと比較すると370年という樹齢はまだまだ、という気がしますが、
イタリアで初の「国の緑の記念物」に認定され保護されているという、
素晴らしい樫の大樹を先日見て来ましたので、そのお話を。

こちらがそれで、「ケッケの樫の木・La quercia di checche」

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樹齢推定370年、高さ19m、幹の周囲4,9m、葉の広がりは約34m、
「レ・ケッケ」という変わった名は、この大木がある土地の名に由ります。



私がこの大樹の存在を知ったのは、今回のトスカーナ行きの前、
地図をあれこれ見ていた時の事で、上にピエンツァ・Piennzaが見え、
左端中にサン・クイリコ、左下にバーニョ・ヴィニョーニ・Bagno Vignoni
そして東に向かうSP53号線の右端にクエルチャ・デッレ・ケッケ。

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SP53号線のちょうど中間にアグリトゥリズモ・カステッロ・ディ・スぺダレット・
Agritrismo Castello di Spedalettoという赤字が見えますが、
これのご案内を分家の方でしておりますので、どうぞ。

ちょうどバーニョ・ヴィニョーニを久し振りに訪問し、そこから州道2号線を
下り、田舎道に入り込んで楽しみ、ピエンツァに向かう途中
県道53号を進み、という様子で大樹を見に寄ったのですね。




県道53号線の、本当にすぐ脇にあり、あっと思って止まり、道路の下に
設けられた駐車場に入り、柵にあった説明がこれ。
「ケッケの樫の木、国の記念物に宣言」


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そしてもう一枚、「ケッケの樫の木 イタリア最初の緑の記念物」

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shinkaiは樫の木の大樹がある、見に行こうと単純に考えて行ったので、
この木の持つ歴史の事など最初に調べもしなかったのですね。

なぜって大樹の姿というのは、そこにあるだけで立派で威厳があり、
孤高の姿で、海を見るのと同じように自分の小ささを自覚し、
生きてゆく励ましや勇気を貰える気がしませんか?!

なので単純に行ったのでしたが、この写真の下に見える 
Prima del grande trauma・大きな外傷の前 という文字に、
この樫の木のつい最近の歴史が込められているのを知りました。




まず現在の姿から見て頂きますが、朝の内は大変良いお天気だったこの日、
お昼近くなって曇り空で残念でしたが、

左に見えるのが県道53号線で、県道の上にまで枝を伸ばしていて、
太い幹の中ほどに丸く空色に見える部分は穴ではなく、
枝を払った部分に塗った塗料。 

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周囲は柵で囲まれ、大きな幹が落ちているのが見えますが、
shinkaiは最初単純に、幹が支えきれずに落ちたのだろう、と。

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枝が広がり、写真を撮るのに後ろに下がりたいものの、
周囲はすぐ傍まで麦畑が迫っていて下がれず、

こちらが南側から見た左半分、枝を払った跡が見えますが、

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そして右半分。

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地面には大きな枝が置かれていて、その大きさに驚くと共に、
とても無残なという気持ち!

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周囲の麦畑は生き生きと育っているので、なおの事。

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大樹の肌はこんなにもごつごつとしていて、

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波を打つ大きな生きた鱗の様にも。

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そして隣の麦畑と同様に、今年の新しい葉もたくさん茂り、
まだまだ生命力が脈打っているのが分かります。

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shinkaiの卓上イーゼルの横木には、昔こちらでの毎日が辛かった時に
貼った小さな紙があり、 「樟の木千年、さらに今年の若葉なり」

どなたの歌かも知りませんが、本の中にあったのを書いて貼り、
眺めては心を持ち直したものでしたが、
この若いたくさんの緑の葉を見て思い出しました。




私の写真だけでは木の大きさがちょっと分かりにくいかと、
サイトから探した人物と一緒の写真をどうぞ。

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見事でしょう?! 立派でしょう?!


樫の木はトスカーナ辺りではたくさん見かけますし、大きなのも多いですが、
やはり糸杉の高さ、スタイル、などに目が行きがちになりますし、
多分材木として役立つので、これ程大きく古くならない内に伐採するのかも。

このケッケの樫の木は偶々土地の持ち主の畑の脇で大きくなり、
近隣の人に大いに愛されていたのでしょうね。

それが2014年の8月15日に、外国人グループによる「木登り」の標的とされ、
上で見て頂いた様に大きな一本の幹が折れたのだそう。

これはすぐに大きな問題となり、グループS.O.S ケッケの樫の木 が発足、
フェースブックでも呼びかけを始め、
イタリア政府の文化財保護と観光省、略称MiBACTの保護下に置かれる
事が3年足らずのうちに決定し、多分2017年から、

ここにイタリア初の、緑の記念物 に指定されたという訳です。

緑の、と付いているのは、このMiBACTの保護に名が挙がっているのは、
現在まではすべて城・要塞とか教会、遺跡のみだったわけで、
日本でいう天然記念物指定の、イタリア初、とでも言えますね。




表示板には、

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ケッケの樫の木は、素晴らしいと同時に繊細です。
370年の樹齢には、我々のたくさんの世話と愛情が必要です。
我々の土地の大いなる母親は、放置されてはなりません。
あなた方にお願いする保護は、枝に上らない事、
揺する様な事をしない、害を与える元となる様な事をしない事。
適切でない方法を使った結果は折れた枝となり、
木がいつこの大きな外傷から回復するのかも分かりません。
が、あなた方と、あなた方の心に、木が感謝する事でしょう。




大きな枝が折れた今も見事ですから、以前の姿はどんなにかと
想像しますが、
最初は上手く持ちこたえるだろうかと皆が心配したのも何とか乗り切り、
現在の姿を見せてくれるので、
今後二度と同じ危害に会わぬことを祈るばかりです。

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オルチャの谷に行かれる方、お時間があったら
この樹齢370年の樫の木に会いに行ってくださいね!
見守れば、きっとあなたに元気と勇気を与えてくれる事でしょうから。


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