キリスト教徒にとってクリスマス後の12日、つまり1月6日は、エピファニーア・
Epifania、またはベファーナ・Befanaの祭日として祝われます。
クリスマスと違って、我ら日本人には、キリスト教徒でない人間には
ちょっと馴染みのない祭日ですが、こちらイタリア、またヨーロッパ圏では
かなり重要な祭日なので、今日はちょっとご紹介を。
こちらはパドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂のあるジョットの壁画で、
「マギの3博士の礼拝」図で、聖母とその膝の上のキリストの前に額づく
「マギの3博士」が、エピファニーアの祭日の主人公達、という事になります。

つまり登場人物はほぼ同一なのですけど、「クリスマス」はキリストの生誕日で、
飼い葉桶の中にキリストがいたのが、「エピファニーア」には聖母の膝の上で、
マギの3博士の礼拝を受けている、公の前に姿を現した、という様子。
日本語ではこの日は「主の御公現の祝日」というそうで、分かり易いですね。
生まれてたったの12日で?!とは仰いますな。 我らがお釈迦様も生まれて
7日目には1人で歩み「天上天下唯我独尊」と仰ったそうですのでね、はい。
ちょっと横道にそれますが、素晴らしい彫り物を見つけましたのでご覧下さいね。
こちらはエミーリア・ロマーニャ州のフォルリ・Forlìのサン・メルクリアーレ聖堂・
San Mercurialeの入り口扉上にある「マギの3博士の夢と礼拝」像で、

左端に眠っている3博士の上に天使が現れ、あちらに、と行き先を示し、
右側に玉座の聖母子の前に礼拝を捧げる3博士の姿。
作者はマエストロ・デイ・メージ、つまりフェッラーラのドゥオーモに残る「歴月像」
と同一人物とみられる13世紀の浮彫作家との事。
で、この夢を見ている3博士の素晴らしい像がこちら。

これはフランスのオータン・Autunにある、サン・ラーザロ聖堂にある柱頭像で、
素晴らしく細かい装飾柄の掛け布に出た手の指輪に天使が触れながら、
もう片方の手は星を指さし、行方を示していますね。
この聖堂は1120~1146年のロマネスク様式の建設が後に改装されているそうで、
このオータンの聖堂に残る装飾浮彫、タンパンの「最後の審判」像も
Gislebertus・ジスルベタスと、当時にあっては大変珍しく署名入りだそうで。
という所で、マギの3博士の登場のエピファニーアの祭日の様子を見て頂く事に。
参考にしたサイトは「LA FESTA DELLA BEFANA NEL MONDO」
チェコ共和国、スロヴェキアの国々では、子供たちは3博士の様に衣装をまとい、
地域の各家を回りつつお菓子を貰う習慣があるそうで。

この写真はどの国のか記してないのですが、上の説明があるので、この一帯のかも。
ラテン・アメリカでは「Los Reyes Magos・賢者」として祝され、子供たちに贈り物を
持ってくるのはサンタ・クロースではなく3賢者で、贈り物に何が欲しいかを子供達が
ねだるのも3賢者なんだそう。

以前はイタリアもそうだったのが、戦後クリスマス、サンタ・クロースの大普及で、
ははは、今の子供たちはプレゼントを両方の日に貰う、という事になり、
とはいえ、大きなプレゼントはクリスマスで、エピファニーアにはお菓子を貰う、と
いう所でしょうか。
フランスでは「王の日・Le Jour des Rois 」と呼び、祝されるそう。
この日に作られ食べられるお菓子は「王様のガレット・Galette des Rois」で、
丸く平べったいトルタ。
各地のお菓子については、下に纏めますね。
スペインでは、子供たちが3賢者を迎えるのに、馬(ラクダ?)の為に靴の中に
藁や穀物を入れて入り口やテラスに出しておくと、翌日にはお菓子やキャラメルに
変わっているという訳。

3博士たちの行進は、各地で軍楽隊や中世風衣装の太鼓隊のお供で
パレードが繰り広げられるそう。
スペインの統治を受けたメキシコでもエピファニーアは祝われ、大勢の人々が
味わうお菓子は「ロスカ・デ・レイエス・Rosca de Reyes」と呼ばれる甘いパンの
一種で、中にキリストの姿をした小さな像が隠されていると。

エピファニーアのお祭りは勿論他のヨーロッパの国々オーストリア、ドイツ、
クロアチア、ギリシャ、イタリア、スロヴァキア、スペイン等でも祝われますが、
キプロス、ポーランドでは1月6日とは決まっておらず、毎年日が変わるそう。
キリスト教正教会ではエピファニーアの祝日は毎年1月19日だそうで、
何百年か前まではエピファニーアの食事はキリストとマギの博士の訪問を祝う
子羊のローストが伝統的なご馳走だったのだそう。
で、この日が祝日とならないのは、オーストラリア、カナダ、イギリス、
そしてアメリカと。
アメリカのニューヨークでは、「マギの3博士の日」を祝うのを広めようと、毎年の
パレードを30年ほど前から行っているそうで、
何千人もが参加して、ラクダや人形たち、山車が練り歩くと。

こちらはギリシャのオルトドッソ・正教会の司祭が正装を纏い、守護兵に囲まれ、
レスボス島のミティレーネ港から、水と十字架をエピファニーアの祝福の為に
運んで行く所。

チェコのプラハでは毎年伝統的に、氷の張ったモルダヴァ河で、エピファニーアを
祝う水泳が行われるそうで! 皆さん、お元気で結構ですねぇ!!


こちらブルガリアでも、東方正教会の司祭が海に十字架を投げ込み、それを
最初に拾おうと男たちが競争して飛び込むのだそうで。

ロシアでは1月6日はオルトドッソのカレンダーで、クリスマスを祝うのだそうで。
伝統的に贈り物は、パードレ・ジェーロ・凍える父さん、とでも、が運んで来て、
バーブシュカ・お祖母さん、つまりベファーナですね、がお供をして配るのだそう。

最後はヴェネツィアで、1970年代に冗談的に始まった「ベファーナの競艇」が
しっかり伝統となり、1月6日のエピファニーアの日に行われます。

イタリアでは一般的に「ベファーナの日、お祝い」とも言われますが、元々
ベファーナとは魔女というか、草臥れ破れた靴、継ぎはぎだらけの服の年寄り女性を
指し、こんな様子で、箒に跨って飛ぶのですね、ははは。

なので、上の競艇の漕ぎ手は皆中年以降の男性で、年寄り女性風に装っている
のですけど、今回こんな写真をサイトで、まだ若い女性も、しかもイタリア女性
ではない人が参加し漕いでいるのも見つけました。
まぁ、それだけ人気がある競艇という事なのでしょうね。

で、ここからエピファーニアの伝統のお菓子、になりますが、
現在のエピファーニア、ベファーナの歴史についてもほんのちょっと、
多分紀元前10~6世紀に遡る異教徒の農作業に繋がるもの、昨年の収穫に感謝し、
新しい年の豊作を願う事に繋がっての事だったろうと。
1月5日の夜にはこちらイタリアでは、日本のトンド焼きに似た風習もあるので、
それらも含めての事と思いますが、
それがどうしてベファーナ・魔女に繋がったか? これは紀元後5世紀頃から
ローマの教会ではすべての異教徒的な行事を、背後には悪魔的な影響があると
恐れ、否定したのだそうで。
そこから悪意のありそうなベファーナ、醜くもある姿が浮かび上がったのだろうと。
でも同時に「良い年寄りの女性」でもあるのですよね。
なので民衆伝説の中では、1月5日と6日の夜には、古着を身に着けた年寄り女が
箒に跨り空を飛び、良い子にはお菓子を、昨年良くなかった子には炭を配る、
という話が今もしっかり根ついているのですね。
という事で、
イタリア全体で、ベファーナのお菓子、炭・カルボーネ

リチェッタは載っておらず、黒くするのは何か分からず残念ですが、
「炭」はやはり異教徒が土地を新しくする儀式で燃やす焚火に
繋がるのであろうと。
スペインの、ロスコン・デ・レイエス・Roscòn de Reyes

上に出たメキシコの「ロスカ・デ・レイエス・Rosca de Reyes」と同様で、
丸い柔らかいパンで、砂糖漬けの果物で飾られたもの。
やはり子供達への贈り物はマギの博士が運んでくるもの、と。
イタリアのピエモンテ州、 フォッカッチャ・ピエモンテ風

長い時間を掛けて熟成させたパン生地の中に1枚の硬貨が入れてあり、
勿論しっかり洗っていて、はは、これは当たった人に幸運を運んでくるものと。
気を付けてかぶりつかないとね。
ギリシャ、 バシロピタ・Vasilopita

新年か、エピファニーアに準備されるギリシャの伝統的なお菓子だそうで、
上のピエモンテのフォッカッチャに似て、こちらも生地の中に幸運を運ぶ印の硬貨が
入り、ブリオッシュのパンに似て、アーモンドと胡麻がはいっていると。
トスカーナ、イタリアで、ベファニーニ・Befanini

粉、バター、卵、砂糖を使って準備する生地はパスタ・フロッラ・Pasta Frollaと
呼ばれ、この生地で作ったビスコットで、エピファニーアのお祭りにはラム酒が
入っていて、形は人間、靴下、帽子、星などクリスマス用と同じで、彩豊かなもの。
スイス、ドライクーニスクーヘン・エピファニーケーキ・Dreikönigskuchen

スイスのエピファニーアの伝統的なお菓子で、名前が既にそうでして、
ブリオッシュの丸いパンの周囲に小さな丸いのが10個ついていて、他の
エピファニーアのお菓子同様に中に小さなプレゼント、小物か硬貨が入っているそう。
当たった人はお祭りの王様となり、この事からもしばしば上に小さな王冠が乗るそう。
ヴェネト州、 ピンツァ・デ・ラ・マランテーガ・Pinza de la Marantega

これは確かにヴェネトにあり、単純にピンツァと呼んでいますし、ピンサ・Pinsaとも
いうそうで、マランテーガとはベファーナの事なんだそう。
ポレンタ、つまりトウモロコシの粉を使い、余り発酵させず、干し葡萄、グラッパ酒、
干したイチジク、松の実、オレンジの砂糖漬けを入れた、ちょっと湿った感じの
お菓子で美味しいもの。
伝統的にヴェネトの農民たちは、新しい年の初めとエピファニーアを祝う時の
焚火の熱い炭の下に、キャベツの葉に包んだピンツァを置いていた、という
興味深い歴史を持っているお菓子だと。
フランス、 ガレッテ・デ・ロア・Galette de Rois

上にも名前が出ましたが、パイ生地を使った中にジャムや果物が詰められた
エピファニーアの祭日に準備される物。
そして中には幸運の印のそら豆が入れられるが、現在は小さなプレゼント小物や、
干した果物が入れられる。
という様な1月6日のエピファニーア、またはベファーナの祭日について、
そしてその祭日の為に準備される伝統的なお菓子のご案内で、
そしてこのエピファニーアのお祭り以降はカーニヴァルに向かい、
2010年のカーニヴァルは2月22日から、29日迄で、その後四旬節に入り、
節制の日々を送り、4月12日に今年のパスクワ・復活祭の日を迎えるという、
キリスト教の教義に則った祭日の繋がりなのでした。
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