先日ピサネッロの絵やデッサンをサイトで調べていた時、
思いがけず、30年以上前にもなりますか、
雑誌で見て忘れられずにいた絵に出会いました。
「ミラノの古い貴族のお屋敷にあるピサネッロの壁画」とあり、
当時初めてのイタリア旅行で見た、古い壁画や祭壇画の虜に
なっていた私には、それはもう、
「遥か遠い国、魅せられたイタリア」以外の何物でもなく、ははは、
ましてピサネッロ、という名にも魔法をかけられ、
大切に写真を取っていたのでした。
その一連の絵に、長い年月の後再会できたのでしたが、
今は有難い事にPCでその写真の出処にも行き着き、
あれこれ調べる事も出来るので、
これらの壁画はミラノのボッロメーオ邸・Palazzo Borromeoに
在ることも分かり、
知らずにいた他の画面も知ることが出来ました。
という事で、今日はこの壁画を通じて、
15世紀ミラノの貴族の子弟のお遊びの姿をご覧下さいね。
そして最後に、現在の貴族のご子孫達の様子もちょっぴりと。
上の写真は、私の記憶に残っている写真の色に近い、壁画の部分。
ミラノのボッローメオ邸はどこにあるか、地図をどうぞ。
まさにミラノの中心、ミラノのドゥオーモから歩いて10分ほど、
1kmにも満たない位置に。
ボッローメオ広場に面した入り口。
13世紀末の建設、四角い窓と、白と赤の大理石を使った
入り口の大きなアーチ。
入り口アーチの上部にいる駱駝像と、植物柄。
その後の改装で建物も大きくなったそうで、
これは上空から見る建物の現在で、
内庭を囲む建物が2つある形で、奥の内庭が広く、
5角形の角柱に支えられたアーチに囲まれた奥の内庭。
奥の内庭は3面がアーチの回廊になっていて、
残る一面に建物の壁があり、
それには壁画と、陶板飾りの装飾のある窓があり、
こちらが上の写真の壁画で、
王冠とボッローメオ家のモットーである
Humilitas・ウミリタス・敬虔、謙遜、の文字。
この建物内の1階の広間に、今回ご案内する壁画があり、
これです!!
窓側になる手前部分には無く、もしくは失われたかで、
3方の壁にこの様子で。
左側が「タロッキ・tarocchi・カード遊び」
中央が「パルマータ・palmata・名前当て、とでも」
右が「パッラ・palla・ボール遊び」
まずは左側の壁画から、
背後にザクロの木が3本ある庭で、
男女5人がカード遊びをしていて、
右背後には湖の風景も見え、
写真によってかなり色の出方が違いますが、
15世紀半ばと見られる壁画に描かれた、
貴族の子弟たちの服装、髪型も詳細。
カード遊びというのは、現在も大変盛んですが、
どこか秘密めき、瞑想的でもある
この遊びの雰囲気がよく出ていると思われませんか?!
実はこの壁画は長い歴史の中で塗りつぶされていて、
第2次大戦の際に爆撃により被害を受け、
戦後に行われた改修の際に見つかったのだそう。
そしてこの赤っぽく見える色合いは実際の色ではなく、
この上から画家はかなりオークル・黄土色系の色を、
セッコ・乾いた状態で掛けているのが剥落し、
湿度の問題もあり損傷が激しく、残念ながら、
到底描かれていた当時の状態ではない、との事!
ですがこれだけ素晴らしい雰囲気がわかるだけでも、
有難いことですよね?!
中央のパルマータ。
やはりここにも5人の男女が手を上げて遊んでいて、
パルマータと言うのは現在の遊びでいうと
「スキアッフォ・デル・ソルダート・schiaffo del soldato」
に似ている、というので友人のジュリアーナにも尋ね、
教えて貰いました。
グループでの遊びで、一人が壁に向い(目をつむり)、
片手を背中に回し手のひらを上に向けて立つのに、
皆が順に指で触って行き、
済んだ所で皆が一斉に自分の指を上に上げて見せ、
それで誰が触ったのかを当てるのだそう。
元の名のスキアッフォ・デル・ソルダートと言うのは、
兵士の平手打ち、の意ですから、
元々は兵士が乱暴に遊んでいた事から来たのかもですが、
画面の中でも、手の平を打ち付けている様子が見えます。
パルマータとか、次のパッラ・ボール遊びなどは、
中世でも伝統的に長く楽しまれ、素朴で仲間と楽しくで、
こういう遊びはいつの時代も変わりませんね。
この中央に立つ女性の衣装も見事ですが、
衣装とか髪型には金色の線が描かれていたがの分かるそうで、
如何にも裕福なボッローメオ一族の子弟たちなのでしょう。
パッラ・ボール遊び。
左の女性が棒を持ち、ボールを打つ所でしょうか?
右奥背景の景色は、ラーゴ・マッジョーレ・マッジョーレ湖の
西岸に位置するアローナ・Aronaであろうと言い、
ここ一帯はボッローメオ家の領地であり、
ボッローメオ国と呼ばれるほどのものだったと!
そして右側に並ぶ女性4人、これは当時の豪華な衣装、
髪型で装った、まさに貴族女性のお披露目の様子で、
色の損失、画面の損傷がとても残念。
これら一連のフレスコ画に登場する女性達のスタイルは、
まさにピサネッロの絵に登場する女性たちを彷彿とさせ、
私が昔見た雑誌でも当時はピサネッロの壁画、と
説明されていたのでしたが、
今回改めて再会し、いや、これはピサネッロではない、
とすぐ思いましたし、調べてもピサネッロという名は出ませんで。
shinkaiの思うピサネッロが描く人物は、
女性はこういう目つきはしませんし、はは、
雰囲気は似ていても、ピサネッロはもっと巧緻です、断然。
このボッローメオ邸の壁画はガイド付きで見学出来ますが、
所有者の関係で月曜から金曜日までのみで、写真も禁止。
見学は約1時間半ほどで、予約が必要、料金は13エウロ。
サイトは
壁画の作者として研究者達から名が上がっているのが、
ミケリーノ・ダ・ベソッツォ・Michelino da Besozzo
という事ですが、
彼の描いた教会のヴォールトの絵はこんな様子で、
彼は細密画も描いていますが、同じような可愛い人物像で、
彼がボッロメーオ邸の壁画の作者とは思えませんです。
このボッローメオ邸は現在もボッローメオ家の持ち物ですが、
オフィスに投資信託会社が使っているようで、
住居にもなっているそう。
所でボッローメオ家についてあれこれ読んでいて行き着いたのが、
ラーゴ・マッジョーレの東岸にあるアンジェーラの要塞・
Rocca di Angera. 200mの崖状にあリ、
元はロンゴバルドの10世紀の要塞だったのを、
14世紀にヴィスコンティ家が現在の要塞の形にし、
ボッローメオ家が増改築したものだそうで、
現在もボッローメオ家の所有。
一連のフレスコ画の「ボール遊び」の中央に見えた湖は、
この要塞の対岸の西にあるアローナという事でしたが、
ここにもかって同様のボッローメオ家の要塞があり、
マッジョーレ湖の船の往き来を見張り、税を取り、
アルプス側からの敵の侵入にも備えていたと。
マッジョーレ湖はかってミラノの街の建設資材、
大理石類などを調達し運ぶ一大輸送地で、
この税を免れた唯一は、ドゥオーモ建設の資材運搬船で、
おまけに石材発掘も無料、運搬費も無料だったと!!
どこかの国に「坊主丸儲け」という言葉が・・、はは、失礼!
残念に、アローナの要塞はナポレオン軍が打ち壊したそうですが、
アンジェーラの要塞は、大変良い保存状態で残っているそうで、
ここにはイタリアで唯一の、「世界の人形」コレクションがあり、
写真左に日本の武者人形も見えますが、
お雛様のセットも見つけました。
お城の見学、人形博物館等は大体3月中頃~10月中頃迄、
朝9時から17時半迄、休館無く開いている様子。
アンジェーラの観光事務所の電話は(+39) 0331 960 207
そしてこのお城では結婚式、披露宴も行われる様子。
所でご案内が後先になりましたが、
ボッローメオ家・Borromeoは、ローマ出身でトスカーナに移住、
13世紀ミラノに移ってきた裕福な商人、貴族。
ミラノでヴィスコンティ家と縁戚となり、
マッジョーレ湖一帯の領有、そして伯爵家となり、
現在でも有数の子孫があり、繁栄存続している一族。
ボッローメオ家で検索を掛け最初に出た写真で、
ああそうか、と思い出したのが、
暫く前にTVニュースでも大々的に出た結婚式の模様でした。
2015年の夏に行われた結婚式で、
モナコで最初に行われた7月末公的役所での結婚式の、
左が花嫁のベアトリーチェ・Beatrice・ボッローメオで、
隣が証人のアンドレーア・カシラギ・Andrea Casiraghi、
花婿の兄で、
同じく証人のご夫婦ジョン・エルカン・John Elkann と、
ラヴィーニア・ボッロメオ・Lavinia Borromeo
お分かりでしょうか、
これらの人間関係から見える上流階級の模様が?!
花婿はモナコのカロリーナ王女の3男、ピエール・カシラギ・
Pierre Cassiraghiで、
花嫁の姉ラヴィーニアが、
フィアット・クライスラーの会長ジョン・エルカンの妻、というわけ。
花嫁はこの最初の結婚式では、
ヴァレンティーノの衣装をお召だったそう。
8月1日ロッカ・ディ・アンジェーラでカトリックの式典が行われ、
要塞の下にお着きのお二人がボートから上がる所。
右側では、お迎えの市長が写真を撮っているもんね、ははは。
こちらがエレガントなアルマーニの衣装をお召しの花嫁、花婿。
はぁ、そうなんですねぇ、イタリアでは戦後共和国になり、
貴族の称号は公的には無くなったのですが、
報道される時はちゃんと称号付きですし、
こういう様子を垣間見ると、
上流階級、現在も延々と続く貴族階級が伺えますですね。
・・やはりパルマータとかボール遊びをされる事もあるんでしょうかぁ?
ははは。
マッジョーレ湖、アンジェーラの要塞の夕日を最後に。
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