・ シエナのプッブリコ宮 「善政、悪政の寓意」の修復現場 公開

昨日偶然に見つけた記事 「シエナ、アンブロージョ・ロレンツレッティの
善政の部屋の一連の修復現場を公開
SIENA, APRE AL PUBBLICO IL CANTIERE DI RESTAURO DEL CICLO DI AFFRESCHI DI AMBROGIO LORENZETTI NELLA SALA DEL BUON GOVERNO

1-1-S28_4809_GF.jpg

思いがけないこの突然のニュースに、俄然浮足立っているshinkaiですが、
まずは、その様子をご覧下さいね。


シエナは、クリスマス期間に市が主催する企画行事の一環として、

「芸術がクリスマスを照らす:感情と持続の間で」 
2022年12月1日から2023年1月31日の間まで、

シエナのプッブリコ宮の「善と悪の政府の寓意と影響」の修復現場を
ガイド付きの特別訪問、というもの。

つまり期間限定で一般公開する、という事で、今月1日から既に
始まっている、という訳ですね。

かなり現場写真が多く載っていて、様子がよく分かるのでどうぞ!

1-Cantiere-Buon-Governo-restauratori_6_GF.jpg


このプッブリコ宮のフレスコ画は、アンブロージョ・ロレンツレッティ・
Ambrogio Lorenzetti(1929頃-1348)により描かれたもので、
1338-1339年、

プッブリコ宮・現市役所、市博物館、の 平和の間・Sala della Pace
の部屋の3面に描かれた、中世ゴシック画の最高傑作の一つとされるもので、


こちらが正面と、向かって右の「善政の寓意、影響」で、

2-vista-degli-affreschi_GF.jpg


左の壁には「悪政の寓意」。 こちらは剥落が激しく。

3-Lorenzetti_ambrogio_bad_govern._det_GF.jpg


というフレスコ画壁画ですが、上の写真に見えるように、かなり高い位置、
天井下、ドアの高さの上に描かれており、

実際に訪問してみるには細部も見えませんし、暗さもあり・・、なのですね。


それが修復の為この高さに床が造られ、こんな風に近くで見ることが出来る!
のですねぇ。

4-Cantiere-restauro-Buongoverno-Siena_4_GF.jpg

手前に写っているパレットは、きっと水彩絵の具のパレットで、
フレスコ画修復の剥落部分を、ハッチングで埋め、鑑賞者が見るには問題なく、
研究者達、後世の修復家達には修復した部分が分かる様に、という
配慮で使われている水彩と。



絵と並ぶこの高さ、だと、実際に画家のタッチまでが見える訳で、
顔を近づけ、思う存分に画家の意図にも思いを寄せ、浸れる訳ですねぇ。

5-Ambrogio_lorenzetti,_affetti_del_cattivo_governoGF.jpg



このアンブロージョ・ロレンツレッティのフレスコ画は、
複雑なメンテナンスのプロジェクトの対象となっていて、

画家の死からわずか数十年後の14世紀後半には、既に問題が
起き始めたのが分かっているそう。

「善政の寓意と善政の効果」の間、つまり正面と右壁の角の元の石膏が
失われ、どうやら最初の補足が行われた様子で、

介入した画家はシエナのアンドレア・ヴァンニ・Andrea Vanni
1330頃-1414後 で、
その後何世紀にも渡り、ジローラモ・ディ・ベンヴェヌート、ピエロ・ディ・
フランチェスコ・デッリ・オリオリ等の名が記されており、

シエナの機関がこの作品の安全と保全に多大な関心を持っていたか
証明していると。

つまりこの作品が描かれた1338-1339年、
シエナを統治していたのは1289-1355年まで続いた「9人の政府、執政官」、
単純に「9・ノーヴェ」とも呼ばれる、市民に選ばれた9人の執政官の政治で、
シエナは一番の繁栄期を迎えた時代だったのですね。

その証ともいうべきフレスコ画で、つまりシエナ人にとっての「パリオ」!
共々、誇りの1つなのだろうと。



現在の修復介入の前に、フレスコ画の診断研究が行われ、変質要因の
評価、塗装全体の科学的分析も行われたそうで、

6-Cantiere-Buon-Governo-restauratori_3_GF.jpg

7-Cantiere-restauro-Buongoverno-Siena_3_GF.jpg


つまり現在のこの3面の壁は、オリジナルと時間経過と共に発生した様々な
修復、切断、補修、およびそれらに起因する不均一な保存状態を示しており、

表面の劣化、石膏の剥離、ほこりの堆積、亀裂などを調べつつ、
以前の修復から得られた結果と比較し、
これらは作業の次の段階を構成する保護措置の重要な基礎となるのだそう。

シエナ市は、多くの各部門の専門家の助けを借り、建設現場を開始し、
シエナ大学、周辺地のグロッセート、アレッツォ、またロータリー・クラブの
各地の支援を受けているそうで。

修復現場は、確信的に設計された足場で、絵画を360度直接見れ、
技術者や修復者は非常に正確な全体評価を行え、


また「知識の場所」として非常に特権的な立場での芸術研究の場として構想され、

修復の為に設置された足場に、安全に上れ、素晴らしいフレスコ画を
間近で見れる訪問を可能にし、

現場での安全を維持する為に限られたグループに限られ、専門家の
ガイドが同行する、というプロジェクトが発足。

8-Cantiere-restauro-Buongoverno-Siena_persone-1024x768_GF.jpg

教育的で有益、そして我らの芸術遺産の保護というテーマでも注目され、

市立博物館の本拠地であるこのプッブリコ宮に加え、大聖堂前の
古代中世の病院であったサンタ・マリーア・デッラ・スカラ博物館も含む
市の観光回路と文化の活性化の機会であり、

国立考古学博物館、シエナ絵画の宝庫である国立美術館もあります、と。


9-cantiere-restauro-affreschi-buongoverno-ambrogio-lorenzetti-1_GF.jpg


という事で、プッブリコ宮のフレスコ画修復現場訪問の要点を。

・ 2022年12月1日 ー 2023年1月31日

・ 毎日 10:30 11:15  12:00  14:45  15:30  16:15
  英語でのガイドは 毎月曜の 10:30 11:15 12:00
  12月25日 閉館  1月1日 午後のみ

・ 最大 1回 9名   約30分

・ 切符 市博物館入場料と共に 21エウロ  在住者 15エウロ
  
・ 切符は既に11月23日から発売されており、
  e-mailによる予約は  ticket@comune.siena.it
  電話では 月曜から金曜の 9時ー13時 +39 0577 292614-15
  
訪問の可能性は、保守サイトでの作業の一時停止によって決定され、
安全性の基準および/または緊急事態が変更された場合、
シエナ市は閉鎖を行う権利を留保し、
作業の残業や時短の場合、入場料は返金いたします。


**

9人の執政官政府 n.1 シエナのプッブリコ宮 ・ ロッジャ・ディ・ノーヴェ
https://www.italiashiho.site/archives/202003-1.html

n.2 マンジャの塔 シエナ
https://www.italiashiho.site/archives/20200401-1.html

n.3 シエナのプッブリコ宮 と カンポ広場
https://www.italiashiho.site/archives/20200404-1.html

n.4 シエナのプッブリコ宮  内部の1
https://www.italiashiho.site/archives/20200407-1.html

アンブロージョのフレスコ画の部屋  n.5 シエナのプッブリコ宮 内部の2
https://www.italiashiho.site/archives/20200410-1.html


トスカーナのスキャンダル ・シエナの子豚「チンタ」の冒険談
https://italiashinkaishi.seesaa.net/article/466790646.html


「天国の門」 ・ シエナのドゥオーモ
https://www.italiashiho.site/archives/20180716-1.html

シエナのドゥオーモ博物館 と ファッチャトーネの上から
https://www.italiashiho.site/archives/20180711-1.html

シエナの朝  カンポ広場からサン・ドメニコ聖堂へ
https://www.italiashiho.site/archives/20180701-1.html

シエナ点描  小路と、黄昏どき
https://www.italiashiho.site/archives/20180626-1.html

シエナのパリオ 2018.7.2 TV中継から
https://www.italiashiho.site/archives/20180706-1.html


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シエナは、私めにとってイタリアにおける最初の長期滞在場所であり、
パリオも見に行ったりで、ヴェネツィアと共にイタリア熱を上げた最初の
現場の1つなのです。

長いブログの掲載リンクを挙げましたが、記録庫のシエナの記事と共に
楽しんで頂けることを願います!


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この記事へのコメント

  • シニョレッリ

    shinkaiさん、こんにちは。

    件のフレスコ画が修復中と仄聞しておりましたが、shinkaiさんの本記事で大体完成したようだと知りました。有難うございます。

    2016年頃には、シモーネ・マルティーニの「マエスタ」が修復作業中だったので、「善政と悪政の寓意」の修復はその当時から予定されていたと思います。

    修復後の状態や仕上がり状態が非常に気になります。
    あまりにも違った状態に修復されてしまうと、修復前の状態に見慣れた目には違和感を感じることが少なくありません。
    作品完成時はこうであったと色鮮やかに蘇ったフレスコ画を見ることがあり、それはその通りなんでしょうが、数百年に及ぶ退色や色の変化があるわけで、修復はその辺との兼ね合いが重要でしょうね。
    2022年12月19日 07:59
  • shinkai

    ★シニョレッリさん、こんにちは! コメント有難うございます。

    今のブログ記事の参考にしたサイトには書いてなかった今の修復工事の経過について、詩のサイトの方に出ているのを、
    記事を書く前にはまだ読んでおらずだったのですが、

    アップして後に読み、分かった事に中に、しシニョレッリさんにお応えできることがありましたので。

    ええとです、まだ修復が完成した訳ではなく、今の所は今年4月に足場の設計が出来、様々な機関との協力体制で診断と調査が開始され、その第一段階がこの11月30日までに完了し、
    技術者、および保護期間による結果評価を可能にするために、約2か月間の技術的休憩を、という段階で、

    つまりこの2か月間の一般公開はこれに当たるわけで、この2か月間が過ぎた所から、いよいよ本当の修復工事が始まる、という事の様です。

    なので、この後の修復に見積もられる期間の長さも、この2か月間の間に調整されるのではないでしょうか?


    そうでしたか、「マエスタ」の修復が2016年頃にあったのですね。
    という事は私が行った2018年は修復後だったのですね。

    そうですねぇ、修復後の色鮮やかさに驚く、というのは、ヴァティカンの、あのミケランジェロの天井画がそうですねぇ。
    素晴らしく色美しくなり、鮮やかで、ピンクや黄色の明るさに驚きましたっけ。

    でもシエナのアンブロージョの壁画の場合の修復は、色鮮やかになる、というよりも、汚れを落とし、もっと剥落した部分の色を、水彩のハッチングで埋め、見易く、元の絵が想像しやすくする、というタイプの修復ではないか、と思います。
    ちょっと剥落がひどいので、そう願います。

    シエナにとっては、あのシモーネ・マルティーニの壁画、向かいのグイド・リッチョとマエスタ、そしてこのアンブロージョの壁画は、もう何にも代えられない宝、だと思いますから、

    今回は大事を取って、ちょっと長期間になるかも、ですね。

    良いお年をお迎えくださいね!


    2022年12月20日 06:30