・ パリに住む、古典絵画の複製家 アンドレア・ドゥルーア

テクノロジーが素晴らしく進んだ現代では、皆さんも良くご存じの様に
古典絵画の複製も安価で一般に普及しており、

既に何人かとなっている様子古典絵画の複製家の、その1人である
アンドレア・ドゥルーア・Andréa Dlouhaについてのお話を。

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彼女の事を知ったのはつい先日で、
有名画家の模写をし、生きるために稼いでいます
Mi guadagno da vivere copiando le opere di artisti famosi

で、今回これを書くためにちょっと検索をかけましたら、
彼女のサイト、仏語版が見つかり、http://www.andrea-dlouha.fr

イタリア語にも日本語にも自動翻訳でき、上記記事の裏付けも
も少し取れ、写真も増え、安心してお伝えを、はい。


「絵画の模写」というと、時に世間で問題となる贋作があり、

つい先日ご案内の「ティツィアーノの再発見作品は国に返還に」も。 
https://italiashinkai.seesaa.net/article/488271979.html


古典絵画の複製、模写というと、これはきっちりと定められた
規定を守りつつ、本作品とは違う事を明らかにしての作品で、

この規定とは、フランスでもイタリアでも、どうやら国によっても
多少の違いはあるようですが、

画家本人が亡くなって後70年を過ぎている事、そして大きさも実作品
とは違う事(プラス、マイナス5cm以上)画布の裏側に模写である旨を
記す事、実画家のサインを真似ぬこと等。


で、アンドレアは世界中からの顧客の注文により、ルノアールも勿論、
ピカソ、ヴァン・ゴッホまで、芸術の歴史の中でもっとも偉大な画家たちの
何十もの作品を模写しているのだそうで、
その内の幾作かを。

上の写真に見える、ルノアールの「舟遊びをする人々の昼食」

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ラファエッロの「バルダッサール・カスティリオーネの肖像」

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ヤン・ファン・アイクの「アルノルフィーニ夫妻」

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アルノルフィーニ夫妻の肖像(ヤン・ファン・エイク)についてのあれこれ
https://www.italiashiho.site/archives/20180216-1.html



ブリューゲル「フランドルの諺」

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こんなのを見ると、自分用にも欲しいなぁ! なんぞと儚い夢をね、
ははは。



この本画はベルリンにありますが、実際に美術館に行き、
前で描いた様子ですね。

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彼女が言うには、印刷物による僅かな色の違いを知る為に、
なるべく実物を見に行く、というように、

ルーブルでも実際の絵の前での写生、模写が美学生達にも
許される、というのは知っておりましたが、
彼女は「ルーブルの作家」としての認定も受けている様子。

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彼女の模写作品はこちらでご覧になれ、クリックすると大きくなります。
http://www.andrea-dlouha.fr/177282897


つまり19世紀には大変繁盛した複製画が、今現在では新技術の
進歩でほぼ消えつつあるにもかかわらず、
彼女の作品が生き残り人気があるのは、
ひとえにその勤勉さと、彼女の技術にあるのだそうで。


彼女は、この上の記事の中では中年くらいに見えるのですが、
自身のサイトの中の写真では、こちらで、お幾つくらいかな?

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ご自身のサイトで分かったのは、彼女はチェコのプラハ生まれ。

で、1986年パリのパスツール研究所で生物学の博士号を取得され、
何年間か製薬業界で働いていた事があり、

この経験が古典絵画の画材の理解とその後の模写実現に
大変役立っているのだそう。

というと、現在60歳位か、もう少しかな、ですね。

が、彼女は最初から画家、または複製画家を目指していた訳でなく、
生物学者であった彼女が数年間働いていた間の仕事は
余り彼女に生き甲斐をもたらさず、

ある時、家に置こうと絵を模写したものの、その最初の1枚は
大した事が無かった、と。

で、彼女が古典絵画の模写の世界に入ったのは、その仕事を失い、
経済的な問題を抱えた時で、その瞬間を掴む決心をしたのだと!

で、それまでの全てを放り出し、工房を開き、彼女を気遣う周囲の
人々を怖がらせましたが、

特定の研究をした事が無く、独学で学びつつ技術を磨き、キャリアを
積むのに20年かかった、と言います。


人々が彼女に、なぜそんなに一生懸命に努力するのか?
現在オンラインで、複製画は30エウロで買えるのに、と。

彼女の答えは、でもそれはプラスティック製のバッグをエルメスと
比較するようなものです、と。 それはそうですね?!



アトリエでは常にラジオはクラッシック音楽もチューナが合わせられ、
壁には古典絵画で覆われているので、別の時代にいる様な印象を。

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複写画の完成には約1年かかるので、注文主は少々忍耐が必要で、
その料金は実技と期間に一致し、小さい絵だと1500エウロから始まり、
複製の難しさと大きさにより数万エウロにも!

かといって、2,2mの高さのアトリエのドアを通過しない大きさの絵は
描けません。

これで思い出したのが、南仏のセザンヌの2階のアトリエの壁で、彼が描いた
大作の「水浴図」を運び出すのに、壁に細い縦長の穴が開いていましたっけ!

セザンヌのアトリエ ・ エクサン・プロヴァンス
https://italiashinkaishi.seesaa.net/article/461110244.html



そして彼女は模写作品の販売と共に、パリのアトリエ・フェルメール
学生、一般者に模写技術、描画も教えていて、

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こちらで様々なコースと期間、費用も分かります。
https://www.ateliervermeer.com/


というのも、かっては複製画自体が芸術の一形態とみなされ、
教師から学生たちに受け継がれていた事、
各工房には独自の秘密があり、業界で認められるまでに
平均13年掛ったのだそうで、

やはり彼女なりの「複製画作り人」が消え去らない為に、の
目的からも始めたのでしょうね。


で、今の彼女の仕事に対する情熱にも拘らず、ずっとアーチストに
なる事を夢見ていたわけでない事は既に上記しましたが、

現在複製品を描くだけで満足しているのかと質問されると、
その質問は芸術世界での永遠の議論を反映していると。

複製する人を単なる技術者と見なす人もいれば、
彼らは全てアーチストだと答える人もおり、

実際問題として注文が多すぎる為、自分の絵に専念する為の
十分な時間がなく、

複製は創造的な芸術では無いものの、全て、作品を描くには
自分自身を再発明する必要があり、

それに、しっかり稼ぐことが出来ます!

というのも、芸術の為に飢えて死ぬ、という芸術家のロマンチックな
概念は、私には決してロマンチックに感じられなかったです、
と笑いながら!!

これは本当に正直な、健全な考え方ですねぇ! 立派!! ははは。



これは彼女のアトリエの壁に見えた、アーニョロ・ブロンズィーノの
描いた「私に触れるな」の一部分ですが、

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彼女アンドレア・ドゥルーアのサイトを見て、ルーブル美術館での
作品進行経過を見ることが出来、大変興味深く眺めました。

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各作品部をクリックすると、大きくしてみることが出来ます。


と、もう1つ大変に興味深く読んだのは、

かっての職業画家は、5つの主要な色のみを使っており、それらを
パレット上で混ぜ合わせて描いていたので、

それで各色が調和し、決して明るすぎない絵画になった方法であると。


これはいつも古典画展を見る時に感嘆し、その画面全体の色の
調和に深い印象を受けていたshinkaiには、
ああ、そういう事だったのか、と! なるへそねぇ!!


彼女がアトリエ・フェルメールで教えているのに使っている、
かって画家が使っていた材料、またはそれに一番近い材料を
使っている、というのをあれこれ知ることが出来、
大変興味深いので、今回分家ブログの方で一緒にご案内しますね。


という様な、現代残る少ない複製画家についてのお話でした。

これは芸術の都パリだから成り立つのかも知れず、
日本で芸術を志す方には羨ましいお話かもですね。
頑張れ、美学生!!


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